使い終わったランドセル

大切に使われたヌメ革ランドセルを紹介します。

弊社ではヌメ革製ランドセルを6年前から展開しています。
「ヌメ革は手入れが大変なのでは?」「6年使ったらどうなるの?」「キズ付き易いって聞いたけど…」など。
今回「卒業したから思い出ランドセルを作って欲しい!」とヌメ革ランドセルをお預かりしましたのでご紹介します。

大切に使っていただいた事が分かります。

革らしいしっとりた艶感が出ています。現在の最新型とは横マチのデザインが少し異なりますが、使い込んで傷んだ感じもなくまだまだ使えそう。

カブセの表面も細かいキズはありますけど目立ちません。

素材の牛革は「芯通し」といって、全体に茶色に染めてあります。細かいキズが付いても内部の色が出てきて目立ちにくくしてありますから、こんな感じに保たれているんですね。
カブセの先の♥型鋲は焼き付け塗装でしたから時間が経つと色が抜けてしまう欠点が判り、現在ではカタチも新設計し、塗料もエポキシ塗料にと改良されています。
少しずつ、改良を繰り返しています。

現在の物と並べてみました。

左が今年のFN291L、右が使い終わった6年前のランドセルです。サイズがだいぶ違いますね。
6年前はA4収納サイズでした。その後A4クリアファイルの収納サイズになり、更にA4フラットファイルの収納サイズになっています。やはり新しい方が鮮やかな色ですね。
こうして並べてみると、変遷がよく判ります。気のせいか使い込んだランドセルの方がいい色?かな~。

内部も見せてね!

さすがに前の部分はつぶれ気味ですけど、型崩れという程ではありません。
大切に6年間使ってくれたのがよく判ります。嬉しいな~!「スミレコちゃんありがとう。」です。

内装のアメ豚もしっとりといい感じですね。皆さん!豚革はこんな感じになるんですよ~!

肩ベルト、下紐もしっかりしていますね。

下紐はすべて手縫いで大マチに当たる部分は3枚の革を重ねて縫っていますけど(どのランドセルも)しっかりカタチを保っています。背中のコーナーの部分も削れていますけど頑張ってますね。

肩ベルトの上部は…。

最初から立ち上がったフォルムですが、使い込んだ革らしさが出ていますね。
防水処理をしていない「本ヌメ革」ですと汗や油脂を吸い込んで黒ずんできます。防水処理と芯まで染めた(芯通し)処理のため、6年経過してもこの味を保つことができるのですね。
ただ、普通のランドセルの革と比べ、軟らかい事もご理解ください。「大切にお使いいただいた例。」です。

カブセの先と小マチの下部も!

カブセの周囲はカンナを掛けて磨き、ニスを塗り重ねて仕上げていますが、ニスは剥げていませんね。前の項でもお話ししましたが、小マチの角の部分も削れていますけど目立ちません。 やっぱり牛革っていいですね~!

カブセと背中、そして本体の接合部分です。

太い糸がしっかり喰い込み、革とタッグを組んでるみたいに見えます。
天然皮革と手縫い。使い込むという事。本物の持つ質感を知らず知らずのうちに感じてもらえる6年です。

  
   
   

カブセの腰!

6年使ってもカブセに張りと腰がなければいけません。表革はヌメ革、芯になる裏側にはアメ豚です。周囲のニスも残っていますね。

  
  
  

肩ベルトの形状に。

たくさんのお子様にマッチするよう心を砕いていますから、6年経った肩ベルトには特別に興味があります。昔師匠に「持ち手に金をかけてあるカバンはいいカバンだ!」と教えられた記憶があります。ランドセルでいえば「肩ベルトと下ベルト」 になります。擦れ具合、痛み具合は今後の重要な研究材料になるのです。

          

カブセの天頂部分のアップです。

ランドセルは毎日のように幾度も幾度も開いたり閉じたり!カブセの表地と裏地を接着する接着剤は大変厳しい状態に置かれています。一部では接着する事自体を最初から諦めるメーカーもあるようです。 細かいシワは散見されますが、革自体の物で醜くはないですね。

    
      
   

最後にもう一度比べてみましょう。

左が最新のFN291L、右が6年背負っていただいたヌメ革ランドセルです。時間の経過で皮革を染めている染料が昇華し、色が薄くなっているのが判ります。
6年で役目を了えるのが勿体ないほどですね。でも仕方ありません。このランドセルはこれから分解され小さな「思い出ランドセル」になります。完成しましたらまたアップしますね。
もちろんご主人さまのお許しがあればですけど。皆さまのリクエストで紹介いたしました。

尚、ランドセルの使い方で痛み具合は大きく変化します。この画像はその一例を紹介したもので6年経ってこのランドセルと同等以上の結果を保証する物ではありません。